
氏名:祝部 大輔先生
所属:鳥取大学医学部医学科 病態解析医学講座分子薬理学(現・社会医学講座医療環境学)
著書:医学統計のためのGraphPad Prismハンドブック
分子薬理学が専門の祝部先生は、薬物の作用機序に関する基礎実験データを解析するのみならず、長年の研究生活のなかで循環器や中枢神経系の実験データや健康リスク行動などを統計学的手法を使ってデータを解析しています。
祝部先生が最初に統計解析に使い始めたアプリケーションはExcelとStatViewだったそうです。(注:StatViewの開発がOS 9版で終了しております)。
「現在は、OS Xのクラッシック環境で起動して使用していますが、幅広い解析手法が採用されていて、専門的な統計解析にも使えるアプリケーションは限られていますので、StatViewの開発終了は残念です。いずれは他の統計アプリケーションに乗り換えねばならない時が来るのかも知れません」と語って下さいました。しかし、一方でSPSSなどの統計解析アプリケーションは操作が複雑であり、とっつきにくい面があるといいます。「今の学生達は、学部でSPSSを学んでいますので、彼らはそれで良いと思います。しかし、これまでStatViewを使ってきた方が乗り換えるのは、なかなか大変です。もし、これらのアプリケーションを使いたければ、最初からじっくり学ぶ必要があるという条件付きですし、どのような統計手法を必要としているのか、果たしてそこまで高度な統計解析アプリケーションが必要かどうかも考えに含めなくてはなりません。高機能なぶん複雑ということがありますので」。いずれにしても、どの統計解析アプリケーションを使うかは、ユーザーのスキルや必要とする統計手法などによって変わってくると先生はおっしゃいます。
祝部先生は、統計解析の一連のワークフローのなかで、複数のアプリケーションをどのように使い分けておられるのでしょうか。また、ワークフローにおけるPrismの位置づけについても伺いました。
「基本的なデータ入力と解析は、昔と変わらず、ExcelとStatViewの組み合わせで行っています。しかし、論文作成やプレゼンテーションにおいて、解析結果をビジュアルとして効果的に伝えるには、StatViewだけでは不十分なものがあります。そこで、グラフ作成アプリケーションであるDaltaGraphを使って論文や発表用のグラフを作成したりします。納得いかなければ,ドロー系のソフトで補います.これが、私の場合の基本的なワークフローです。正確には、"従来のワークフロー"は、これでした」。これまで、StatView+DaltaGraphという組み合せで、ほとんどのグラフを作成していたという祝部先生ですが、Prismに出会ってからは、ワークフローが変わったそうです。
「Prismは、薬物の用量反応曲線のようなグラフ(シグモイド曲線)を非常に綺麗に出力してくれますので、今では、正確な曲線グラフが必要な場合には、StatView+DeltaGraph+ドロー系のソフトではなく、Prismを使うようにしています」。DeltaGraphでは、イメージした曲線グラフを書くのに多少の試行錯誤が必要でしたが、Prismでは、これらの作業が実際の数値データに基づいて自動的に行われるので、簡単に正確な曲線が描けます。

祝部先生がPrismを使い始めた理由は、それが Mac OS X対応アプリケーションだったことだけでなく、曲線グラフの作成(特にシグモイド曲線)をはじめとして、各種のグラフ作成機能が優れていたことだそうです。
「Prismと出会ったきっかけは、とある海外論文誌を読んでいて、とても綺麗な用量反応曲線のグラフを見つけたことです。一体、どんなアプリケーションを使って描いているのかと興味をもち、調べてみると、Prismが使われていました」。
実際にPrismを使ってみての感想は「Prismに搭載されている解析手法は、医学の臨床研究や基礎研究にフォーカスされています。これは医学以外の統計解析全般を相手にする統計の専門家にとっては、やや物足りない感じもありますが、逆にいうと、臨床医家や医学の基礎研究に携わる先生方にとっては、かゆいところに手が届く設計になっていると思います」とのことでした。例えば、先生ご自身も、薬理研究などで多用される「50%有効濃度(EC50)」などの数値が自動的に計算してくれる点に感心なさったのだそうです。Prism開発の中心人物が薬理学者であることが、このアプリケーションの医学研究における使いやすさに繋がっているのかも知れません。 いずれにしても、いまや、祝部先生にとっては「(用量反応曲)など、精緻な曲線グラフの作成時には」Prismが必要不可欠なのだそうです。
統計解析のワークフローにおいてPrismのグラフ作成機能は必要不可欠とおっしゃる祝部先生に、Prismとは一体どのようなアプリケーションなのか、その特長を伺いました。
Prismの第一の特長は、データテーブルからグラフ化のプロセスが簡便であり、ワンタッチで様々なグラフが描けること。そのため、データのもつ意味を最も的確に表現できるグラフを、迅速に作成することが出来ると祝部先生はおっしゃいます。
「今まで自分が使用してきたStatView+DeltaGraphという組み合わせで、同様のことをやろうとしたら、DeltaGraph内で試行錯誤を繰り返し、とても手間がかかってしまいます」。しかし、「Prismでは、Prismだけのワンタッチでいろいろな角度からデータを眺め、データの意味伝達の上で最も効果的なグラフを検討・決定・作成することができる」とのことです。
Prismでは、データセットとダイナミックに連動したグラフ描画が実行されることも特長となっています。すなわち、データセットに変更を加えた場合、その解析結果およびグラフも自動的に変化します。さらに、グラフ内に表示したp値などもデータセットと連動して変化します。ですから、論文やプレゼンテーションを作成する場合、間違いなくデータセットに直結したグラフや数値を、ビジュアルとして提出できるのです。
Prismの2つ目の特長は、祝部先生も強調されているように、美しく見栄えのするグラフが作成できることです。ここでいう「美しい」とは、見た目だけの美しさだけではなく、科学的な美しさ、つまりデータに直結した正確なグラフが作成できるという意味も含まれます。
「見やすくきれいなグラフが作れることは、学術的なコミュニケーションを円滑にする上で、とても大切なことです」
見やすくきれいなグラフ作成という面でも、Prismのグラフ機能は優れていると言えるでしょう。例えば、軸破断が含まれるグラフの作成や、1つのデータセットから作成した2つのグラフを1つの図内に収めるなども、Prismでは簡単にできます。祝部先生は「Prismを使用する以前は、ドロー系のソフトでグラフをパーツ毎に地道に修正していましたから、Prismのグラフ機能はとても助かりますね。プレゼンテーションや論文図表において見栄えのするグラフが作れることは、学術的なコミュニケーションを円滑にする上で、とても大切なことです」と述べています。
Prismでは、データ(Data Tables)、付帯情報(Info)、解析結果(Results)、グラフ(Graphs)、レイアウト(Layouts)の5つのセクションが1つの「プロジェクトファイル」(Prismファイル:拡張子はpzf)として保存されます。この形式のメリットの1つは、グラフの作成に使用したデータセットを間違いなく保持できることです。研究・データ収集の途中段階で、解析結果およびグラフを確認し、さらに新たなデータが加わる。このような流れの中で、各段階のデータセットと解析結果およびグラフが混同することなく扱えることは、信頼性の高い研究成果を上げるうえで役立つでしょう。しかも、Prismでは、データと解析結果・グラフがダイナミックにリンクしているので、データに変更が加えられたのにグラフに反映されていない、といったミスは起こりえません。
祝部先生は「Prismのプロジェクトファイルは、Macで作成したものと、Windowsで作成したものとの互換性が高い」と指摘されました。例えば、医局のWindowsと自宅のMacとの間でファイルを移動して作業を継続することも可能であり、共同研究者とファイルを共有する際にも、MacとWindowsの違いを気にする必要がないといいます。「これまで(Prismでは)MacとWindowsとの間でファイルをやり取りして、グラフやレイアウトが崩れてしまった、ということは一度も経験していません。安心してファイルのやり取りが出来ています。これも重要な特長だと思います」と話して頂きました。なお、このように複数のコンピューター間でファイルを移動する場面でも、データセットと解析結果・グラフがワンセットで扱えることはメリットになります。

Prismを使うにあたって気を付けるべき点について、祝部先生に伺いました。「まず、Prismを使い始めるときの注意点ですが、StatView等に慣れている人だと、データテーブルの使用法を間違う可能性があります。この点はとくに、使用前にマニュアルをしっかり読んで理解する必要がありますね。一見Excelに似たセルが列んでいるのですが、このセルの構成はPrism独特なものですので、データを打ち込む前に理解しておく事が肝心です。データ入力の時点でつまずくと、そのアプリケーションを使う気が無くなってしまいがちですが、Prismはデータテーブルの使用法さえ理解してしまえば、データ入力からグラフ作成までのプロセスは非常に簡便ですので、是非とも、データテーブルだけはしっかり理解して下さい」。
Prismは、臨床における生存率解析(カプランマイヤー法とログランク(Logrank)検定を用いたイベント発生までの期間の解析)や、基礎実験におけるデータ比較(t検定やone way ANOVA)、薬理学などに多用される各種解析法にフォーカスされた解析手法が用意されている反面、数学的な統計手法全般に広く対応しているわけではありません。祝部先生は「あくまでも医学の臨床データ解析や基礎実験の結果解析に向いているアプリケーションですので、その他の用途も含めた一般的な統計解析すべてに万能というわけではありません」と指摘なさっています。「また、臨床研究などにおけるサンプル数は通常それほど大きいことはないと思いますが、サンプル数が大きい場合(大規模臨床試験など)は、他の統計ソフトとの使い分けをお勧めします」とのことでした。
最後に、Prismのおすすめのポイントを、祝部先生にまとめて頂きました。
「小〜中規模の患者集団における生存率解析や、臨床あるいは基礎研究におけるデータ比較、曲線グラフ(特にシグモイド曲線)を手軽かつ正確に作成したい場合などに非常におすすめなソフト」とのことです。
Prismは、グラフの形状のみならず、p値の表示などが、全てデータセットに連動している点が特長であり、また、グラフ作成機能に秀でているため、論文やプレゼンテーションの作成に使用すると効率的に作業を進めることが可能で、情報伝達の上でも効果的な結果が得られます。また、Mac-Windows間のファイル交換が可能なので日常的な運用にも便利であり、他の統計ソフトに比べると比較的安価に入手できることから、個人ユーザーにとって強力な研究ツールになると考えられます。