医学統計ソフトGraphPad Prism10
Prism10の主な新機能 | Prism10アップデート | 統計解析機能 |非線形回帰機能 | システム条件 | 製品カタログ
GraphPad Prism10 より、新しいファイル形式(.prism)が導入されました。新しい Prismファイル形式では、ファイルコンテンツが探索や検証が可能な構造に保存されます。業界標準による保存方法が用いられ、データはCSV形式、グラフプレビューはPNG形式、分析パラメータと結果はJSON形式で格納されます。新しいファイル形式を採用したことで、Prism を使用していなくてもファイルの内容を読み取ることができるようになりました。
また、多変量データテーブルからグラフの変更をリアルタイムで確認できるグラフ・インスペクター機能の追加、新しい P値サマリースタイルの導入、データテーブルサイズの拡張やデータ処理速度の向上など、機能の追加や強化が行われています。
GraphPad Prism10 新機能
グラフインスペクター
グラフ・インスペクター機能により、多変量データテーブルからグラフの外観やデザインの変更を、リアルタイムで確認できるようになりました。変更内容が即時に反映されるので複雑な変更もスムーズに行えます。詳細
レスポンシブP値
新しいP値のスタイル「One or None」を導入しました。P 値がα値より低い場合はアスタリスク1つを、高い場合はアスタリスクなしを割り当てます。 詳細
2-Way ANOVA
2-way ANOVA に、新しいオプションが追加されました。多重比較の指定方法として、行内の比較と列内の比較を同時に実行できるようになりました。 詳細
Prism Cloud ワークスペース
Prism Cloud ワークスペースは、Prism で行っている作業を公開、共有し、同僚と議論することができる全く新しいWebベースのアプリケーションです。 詳細
フック機能の強化
以前のバージョンではフック(Hook) できる値が限定されていました。Prism10では実行可能なすべての分析の値を選択できるようになりました。 詳細
機能強化 | 多変量データテーブル
多変量データテーブルのためのさまざまな新しいツールが導入され、データをスムーズに分析およびグラフ化することができるようになりました。
データテーブルサイズ拡張
1枚のデータシートに含まれる列の数が、以前のバージョンと比較して2倍になりました。Prism10では、各データテーブルは最大2,048列、サブカラムは最大512列でデータ入力が可能になりました。
データ処理速度の向上
ファイルを開く、ファイル保存、データやグラフのエクスポート、グラフのプロット、ファイル内のシートの切り替え、データのシミュレーションなど、データ処理の速度が向上しました。
ウィンドウの複数表示
以前のバージョンでは、同時に開くことができるウィンドウは16個まででした。Prism10ではこの制限が解除され、必要なだけ多くのウィンドウを同時に開いて作業することが可能になりました。
GraphPad Prism10 アップデート
2024/8/1 に GraphPad Prism 10.3.0 がリリースされました。GraphPad Prism10 または サブスクリプションライセンスをお持ちの方は、無料で最新のバージョンにアップデートすることが可能です。
サンプルサイズと検出力分析
Prism Cloud Workspace* からサンプルサイズの計算と検出力分析を実行できます。実験に必要なサンプルサイズを決定したり、サンプルサイズ、検出力、効果量の関係を調べることができます。
* Welcome to GraphPad Prism ダイアログの CREATE から Sample Size and Power を選択し、Start Analysis ボタンをクリックすると、Prism Cloud Workspace の Powere Analysis にアクセスすることができます。
Prism Cloud Workspace にアクセスするには、 Prism Cloud Workspace のアカウントを設定しサインイン状態にしておく必要があります。アカウントの設定方法については、Prism Cloud にはどのように接続(サインイン)しますか?
CLD(コンパクトレター表示)機能
GraphPad Prism9 に追加された Stars on Graph(スターズオングラフ)機能は、グラフにアスタリスクやP値を追加する機能です。ワンクリックでペアごとの比較がグラフに追加され、データを変更すると自動的にグラフにも更新されます。
One-Way ANOVA(一元配置分散分析)およびTwo-Way ANOVA(二元配置分散分析)は、グループの数によって多くの比較が行われます。Stars on Graph 機能を利用し、これらの比較をグラフ上にブラケットやアスタリスクで要約すると、多くのスペースがとられ結果の解釈が難しくなってしまいます。
CLD(コンパクトレター表示)機能を利用すると、ブラケットやアスタリスクが各グループに割り当てられた文字に置き換わります。もし2つのグループに共通の文字があれば、これら2つのグループ間の比較は統計的に有意ではないと判断することができます。2つのグループに共通の文字がない場合、これら2つのグループ間の比較は統計的に有意であることがわかります。
グラフ・インスペクター
Prism10 に新たに搭載された「グラフ・インスペクター」は、多変量データテーブルのサイドパネルとして表示されます。グラフインスペクターから、グラフの外観やデザインを素早く変更し、変更をリアルタイムで確認することができます。1つのデータポイントを選択してハイライトし、ハイライトされた箇所のプロパティをテーブルから表示する機能や、再度クリックしてグラフ上の対応するポイントグループをハイライトすることも可能です。
レスポンシブ P値
GraphPad Prism のアルファ閾値は 0.05 がデフォルトの値となっており、結果シートに表示される P値のサマリー(P value summary) は下記の規則に従って出力されます。
ns :P値は 0.05 より大きい
* :P値は 0.01 より大きく 0.05 以下
** :P値は 0.001 より大きく 0.01 以下
*** :P値は 0.0001 より大きく 0.001 以下
**** :P値は 0.0001 以下
目的によってはアルファ閾値を 0.05 以外にして検定を行う場合がありますが、この際にアスタリスクの解釈に相違がでることが考えられます。例えばアルファ閾値を 0.01とすると、0.032 のP値のサマリーはアスタリスク(*)が1つ割り当てられます。どの閾値が使われたかについての追加情報がなければ、見る人によってはこの1つのアスタリスクを、「P値が選択された閾値より低かった」と解釈するかもしれません。しかし、実際に使用された閾値は 0.01 ですので真実とはいえません。
また、多重比較を補正する方法で FDR を使用する場合、常にレスポンシブ P 値サマリースタイルが適用されるようになり、フローティングメモで追加されたアスタリスクの解釈が説明されるようになりました。
この問題を解決するために導入されたのが、レスポンシブに対応するP値スタイル「One or None:P > alpha (ns), P ≤ alpha (*) 」です。この新しい One or None スタイルでは、多重比較における特定のアルファが、P値にアスタリスクを付けるかどうかを決定するため常に使用されます。そして、アルファ値が変更された場合、アスタリスクの割り当てが再評価されます。
One or None スタイルを選択すると、P値がそのアルファ閾値より小さい場合はアスタリスクが1つ割り当てられ、それ以外の場合は割り当てられないため、P値サマリーのアスタリスクの解釈が容易になります。この新しいP値サマリースタイルは、P値サマリーが使われる全ての分析で利用でき、FDR法を使用して補正された多重比較に常に使用されます。
2-way ANOVA 多重比較:新しいオプション
多重比較の指定方法として、行内の比較と列内の比較を同時に見るという方法がよくあります。以前のバージョンでは、これらの比較を別々に行う必要がありましたが、Prism 10では行内と列内の比較を同時に実行できるようになりました。
また、比較する項目を指定する機能も新たに導入されました。
Prism Cloud ワークスペース
すべてのPrismサブスクリプション*に対して、Prism Cloud ワークスペースが自動的に生成されます。Prism Cloud ワークスペースにアクセス後、Prismファイルを開いて Prism Cloud ツールバーアイコンをクリックするだけで、Prism Cloud 上で公開することができます。
ワークスペースの他のメンバーとファイルを共有したり、他の Prism Cloud ユーザーを招待してファイルを共有することができます。また、公開されたプロジェクト内でディスカッションを行うことで、他のユーザーから直接フィードバックを受けることができます。
*永続ライセンスは対象外となります。フック(Hook)機能の強化
Prismでは、ある解析結果を他の解析のパラメータダイアログやグラフ作成ダイアログに「フック(Hook)」し、フックした値をその解析やグラフの選択で使用することができます。分析結果やグラフがすべてリンクされたままなので、フックによって紐づいたデータが編集されたり、分析パラメータが変更されると結果やグラフが自動的に更新されます。
Prism 10では、以前のバージョンよりも多くの値を使用することができるようになりました。Prism 10 で非線形回帰を実行した場合、Hook ダイアログで利用できる値は以下の通りです。
- ベストフィットのパラメータ値を持つモデル式(「Y = ...」)
- 各パラメータの標準誤差
- 信頼限界の上限/下限と信頼レベル
- 任意のパラメータ対の共分散
- すべての適合度測定基準
- 各データセットのデータ要約統計
また、2-way ANOVA(二元配置分散分析)などの解析結果も フック(Hook)できるようになりました。利用できる解析結果は以下の通りです。
- 一元配置分散分析 (One-way ANOVA)
- 二元配置分散分析 (Two-way ANOVA)
- 三元配置分散分析 (Three-way ANOVA)
- 曲線下面積 (AUC)
- ブランド-アルトマン(Bland-Altman)検定
- カイ二乗(Chi-Sqare)検定
- 相関分析
- Cox比例ハザード回帰
- デミング(Deming)回帰分析
- 記述統計
- 補間
- カプランマイヤー(Kaplan-Meier) 法
- 多重比較
- 重回帰分析(多重線形回帰)
- 多重ロジスティック回帰
- 多重t検定
- ネストANOVA
- ネストt検定
- 非線形回帰
- 正規性検定
- One sample t test
- 外れ値分析
- 主成分分析 (PCA)
- ROC曲線
- 線形回帰
- ロジスティック回帰
- t検定
GraphPad Prism10 統計解析機能
GraphPad Prismは専門的に統計を行うプログラムではなく、医学統計にフォーカスしたプログラムです。医薬学分野で高い頻度で使用される統計が簡単に行えるようになっています。
XY分析
- 線形回帰
- 非線形回帰
- 3次スプライン&LOWESS曲線
- スムージング曲線
- 曲線下面積(Area Under Curve)
- デミング(Deming)回帰分析
- Row means with SD or SEM
- 相関分析
- 標準曲線の内挿
カラム分析
- t検定
- 対応のないt検定
・マンホイットニー(Mann-Whitney)検定
・ コルモゴロフ-スミルノフ(Kolmogorov-Smirnov)検定 - 対応のある t検定
・ウィルコクソン符号順位(Wilcoxon) 検定
・比率によるt検定
一元配置分散分析(One-Way ANOVA) - ネストt検定
- ボンフェローニ(Bonferroni)検定
- ダン(Dunns)検定
- ダネット(Dunnett)検定
- フリードマン(Friedman)検定
- ホルム-シダック(Holm-Sidak)検定
- クルスカルウォリス(Kruskal-Wallis) 検定
- ニューマン-クールズ(Newman-Keuls)検定
- テューキー(Tukey)検定
- バートレット(Bartlette)検定ブラウン-フォーサイス(Browne-Forsythe) 検定
- ROC曲線
- ブランド-アルトマン(Bland-Altman)検定
- 相関
生存分析
- カプランマイヤー(Kaplan-Meier) 法
- ログランク(Log-rank)検定
- ウィルコクソン(Gehan-Wilcoxon)検定
分割表分析
- フィッシャー(Fisher) の正確確率検定
- カイ二乗(Chi-Sqare)検定
- アーミテージ-コクラン(Armitage-Cochrange)検定
グループ分析
- 二元配置分散分析(Two-way ANOVA)
- 三元配置分散分析(Three-way ANOVA)
- ボンフェローニ(Bonferroni)検定
- フィッシャー(Fisher) の最小有意差検定
- ホルム-シダック(Holm-Sidak)検定
- ニューマン-クールズ(Newman-Keuls)検定
- テューキー(Tukey)検定
- 多重t検定
多変量解析
- 主成分分析
- 重回帰分析(多重線形回帰)
- 多重ロジスティック回帰
- Cox比例ハザード回帰
その他
- 列の統計
- コルモゴロフ-スミルノフ(Kolmogorov-Smirnov)検定
- ダゴスティーノ・パーソン(D’Agostino-Pearson)検定
- シャピロ-ウィルク(Shapiro-Wilk)検定
- モンテカルロ分析
- アンダーソン–ダーリング(Anderson-Darling)検定
利用できない統計・解析
GraphPad Prismでは次の統計解析機能を備えておりません
- 因子分析
- クラスター分析
- メタ分析
- 多変量分散分析(MANOVA)
- Cochran-Mantel Haenszel検定
- 線形混合モデル
- 共分散(ANCOVA):2つの線形回帰直線の勾配と切片を比較することは可能です。
- ヨンクヒール-タプストラ(Jonckheere-Terpstra)検定
- スティール-ドゥワス(Steel-Dwass)検定:Prismでノンパラメトリック検定の多重比較をする場合、Dunn検定を用いることが可能です。
- スティール(Steel)検定:Prismでノンパラメトリック検定の多重比較をする場合、Dunn検定を用いることが可能です。
- マクネマー(McNemar)検定:GraphPad Software社が提供するQuickCalcsで行なうことが可能です。
GraphPad Prismの非線形回帰機能
カーブフィッティングはデータ分析の際に重要なツールとはいえ、必要以上に複雑になってしまうことがあります。GraphPad Prismには様々な曲線の計算式が用意されており、計算式を選択した後はPrismがカーブフィットを行います。また、Prism を利用すれば、標準曲線から補間して未知の値を求めることも簡単です。
・・・
NIST(米情報標準技術局)では、統計解析ソフトウェアの信頼性を検証するテストプログラムおよびデータセット群(StRD)が提供されています。NISTの公開しているデータセット群を使い、Prismの非線形回帰(カーブフィッティング)に関する演算能力のテストを行ったところ、Prismによる非線形回帰の結果は、NISTのガイダンスにほぼ準拠する結果がでています。詳細は FAQ: Prismの非線形回帰機能の妥当性は?をご参照下さい。
ラーニングページにて非線形回帰機能の紹介をしています
統計ガイド・フィッティングガイドより抜粋したチュートリアルを、Prismラーニングページよりご覧いただけます。
GraphPad Prism10 システム条件
GraphPad Prism10のシステム条件は以下の通りです。インストール可能台数やライセンス許諾についてはFAQ:ライセンスについて をご参照下さい。
GraphPad Prism10 for Win
Windows で頻繁にクラッシュ(フリーズ)する原因と対処方法:Windows で Prismがフリーズする問題が確認されています。問題の詳細と対処方法は FAQ0147:Windows 10(バージョン2004, 20H2および21H1)でPrismがフリーズする をご参照下さい。- Windows 10 および 11 - 64bit版 (32bit版には対応していません)
- CPU: x86-64互換 CPU x64 エミュレーションにより、ARM チップ サポート(Windows 11のみ)
- HD/SSD空き容量: 100MB
- ディスプレイ解像度: 800 x 600以上 (推奨 1366 x 768 以上)
- RAM: データセル 200~800万: 4GB / データセル 800万~1,600万:8GB / データセル 1,600万以上:16GB
- Windows RT, Windows98, Windows2000, Windows XP, Windows NT では動作しません。
GraphPad Prism10 for Mac
プロジェクト作成または開くとクラッシュ(フリーズ)する原因と対処方法:GraphPad Prism 10.0.2 以前のバージョンは Mac OS 14 (Sonoma) 上でプロジェクト作成またはファイルを開こうとすると、クラッシュする問題が報告されております。最新のバージョンにアップデートしてご利用ください。- MacOS X 10.15 (Catalina) 以降 - 64bit版 (32bit版には対応していません)
- CPU: MacOS 11.0 (Big sur)上のIntelチップ/Apple Silicon(Apple M1)の両方での動作確認が行われています
- HD空き容量: 130MB
- ディスプレイ解像度: 1024 x 768以上
- RAM: RAM に関しては特に必要条件はありません。Prismは、Apple社製のすべての標準的な Mac で問題なく動作します。
- MacOS 10.14 以前のバージョンにつきましては、開発元による動作確認/保証はされておりません。開発元では MacOS のアップデートを推奨しております。
Win / Mac 共通
- Prismはローカル環境で利用されるように開発されており、Windows serverやZPA環境下での動作は保証しておりません。
- VirtualBoxやVMwareなどの仮想OS、Amazon WorkSpacesなどの仮想デスクトップ上での動作については保証しておりません。
- ライセンス検証のため以下のタイミングでインターネット接続が必要となります。
1. インストール時(アクティベーションの際に必要となります)
2. 最後に起動してから30日後、または 20回目の起動時
旧バージョンのシステム条件は、GraphPad Prism旧バージョン情報をご参照ください。